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DATALE創業3周年記念コラム――変化を、恐れるか。面白がるか。

AIの進化が、時に未来を不安に見せる。
ニュースを開くたびに「仕事が奪われる」という言葉が目に入り、
自分のキャリアはどうなるんだろう、と胸の奥がざわつく瞬間もある。

でもその一方で、
“考える力”と“選ぶ力”は、どんな時代にも人から奪われない。
テクノロジーがどれだけ進化しても、人間だけが持ち続ける力だ。

2025年、株式会社DATALEは創業3周年を迎えました。
変化が加速するいま、データとAIは“人の選ぶ力”をどのように支え、
ビジネスやキャリアの未来にどんな可能性を開いていくのか――
その問いを深めたくて、今回の対談を企画しました。

ゲストには、働き方・キャリア論の第一人者である雇用ジャーナリスト 海老原嗣生 さんを迎え、
DATALE代表 板谷越英美 とともに、
「変化」「キャリア」「AI」「選ぶ力」について語り合いました。

~対談したひと~

雇用ジャーナリスト/人材・働き方領域コンサルタント
海老原 嗣生(えびはら つぐお)さん

雇用ジャーナリスト/人材・働き方領域のコンサルタント。1964年東京都生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)に入社し、新規事業企画・人事制度設計を担当。その後、リクルートワークス研究所で雑誌『Works』編集長を務め、2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを設立。著書多数、働き方・キャリア論の第一人者としても知られています。

板谷越 英美(DATALE代表)
インフラエンジニア、アーキテクト、PMとしての経験を経て、リクルートでビッグデータ活用やデータサイエンス組織の立ち上げに携わる。2021年に独立し株式会社DATALEを創業。企業の事業成長にコミットするデータ活用・AI活用のプロデュースを行いながら、「人の考える力を拡張するAI」の可能性を追求しています。

■3年目の景色――「変化が激しい。だから、面白い。」

板谷越:
DATALEを創業して3年が経ちました。
この3年は、“予定された成長曲線”というより、ご縁をいただいたお客様の「いま本当に必要なデータ活用」に応え続けてきた期間でした。

そして現場では、特にAIの存在感が一気に大きくなってきました。
設計さえできれば、コーディングは数分、テストは一瞬。
レビューもまずAIが“70点”を返す。
人は「最後の30点」に集中できるようになってきています。

データ活用やシステム開発の世界で、
「知恵の効能を10倍、50倍にできる」
そんな実感が現実になりつつあります。

海老原:
こういう話を聞くとさ、AIの進化って“仕事の構造そのもの”に手を入れてきたんだなって感じるよね。
昔は時間をかけてやっていた工程が、AIによって一気に圧縮される。
そのとき、人はどこで価値を出すのか…そこが問われている。

板谷越:
そうですね。
ただ、その変化を危機としてだけ捉える必要はないと思っていて、
DATALEとしてはずっと「変化はチャンス」というスタンスで動いてきました。

海老原:
うん、その捉え方は大きいよ。
変化って止められないものだから、どう向き合うかでキャリアの方向も全然変わる。
そこに“自分なりの判断軸”を持てるかどうかって、大きいよね。

板谷越:
はい。
安定したから速度を落とすのではなく、
変化が激しいからこそ、自ら踏めるアクセルがある。
3年目の今は、そんな感覚に近いですね。

「キャリアは一本線じゃなくていい」――偶然から生まれる複線キャリア

板谷越:
AIの話をしていると、最終的には“人がどう生きていくか”というところに戻ってくる気がします。
変化が大きい時代だからこそ、「働き方」や「キャリアの選び方」って、改めて考え直したくなるテーマですよね。

その流れで、海老原さんのキャリアのお話も伺いたくて…。最初から今の形を思い描いていたわけではないんですよね?

海老原:
まったく狙ってないよ。
もともとは物書きになりたかったのに、最初は大手メーカーに入って、そこからリクルートで編集・制作をやって、『Works』の編集長を経て独立。
あとから見れば一本の線に見えるけど、実際は
“目の前の機会に飛び込んで、きちんと成果を出す”
それを繰り返していただけなんだよね。

海老原:
それでね、キャリアの世界には「クランボルツ理論」っていう考え方があるんだよ。

クランボルツは、
「キャリアの85%は、計画ではなく“予期せぬ出来事”から生まれる」
って言ってるんだよね。

つまり、
“人生のほとんどは予定調和じゃない”
ということ。

じゃあ、どうすればいいかというと、彼は5つの態度を挙げている。

  • 好奇心(Curiosity):ちょっとでも引っかかったら触ってみる
  • 柔軟性(Flexibility):状況が変わっても固まらない
  • 冒険心(Risk-taking):少し怖くても動いてみる
  • 継続性(Persistence):すぐにあきらめない
  • 楽観性(Optimism):何とかなるかもしれないと思ってやってみる

ここで面白い話があってね。

たとえば、目の前の道に「穴」が空いているとする。
悲観的な人は慎重に歩いているから、その穴にちゃんと気づく。
だから本来なら、穴に落ちずにうまく歩いていけそうだよね。

一方で、楽観的な人は「まあ大丈夫だろう」って進むから、
穴に気づかず、かえって落ちてしまいそうに見える。

理屈だけで考えたら、
成功するのは悲観的な人のほうに思えるでしょ?

でも現実には、なぜか成功していくのは楽観的な人が多い。
ここに、クランボルツ理論のいちばん面白いところがある。

なぜかというと、
悲観的な人は、穴に気づいた瞬間に「怖くなって歩くのを止めてしまう」からなんだよ。
一方、楽観的な人は、転びながらでも歩き続ける

だから冒険心と楽観性って、すごく大事なんだよね。

僕が悲観的な人にいつも言うのは、
「穴に気づく力があるのは、むしろ才能なんだから、
気づいたなら、逃げるんじゃなくて穴を埋めればいい」ってこと。

穴が埋まれば、「もう大丈夫だ」と思える。
それが、いちばん健全な楽観につながる

この5つを持っていれば、
30代でも40代でも、自分の“ベクトル”は見つかる。
一本外れたら終わり、なんて思う必要はないよ。

板谷越:
その考え方、本当に心強いですよね。
私自身、大学卒業後、就職したもののすぐ退社して
引きこもってオンラインゲームに没頭していた時期があって、
ある日そのPCが壊れてしまって(当時の私には本当に死活問題で…笑)、それを自分で直そうとしたことがきっかけでITの世界に入ったんです。

派遣社員からIIJへ、そこからリクルート、そして独立。
まったく予定通りじゃなくて、偶然の連続でした。

でも一つだけ決めていたのは、
「期待されたことには、最後まで責任を持って応える」 ということ。
その積み重ねが、自分の方向性をつくってくれた気がしています。

■ジャンクションポイント――「違う」と感じた瞬間を見逃さない

板谷越:
キャリアって、あとから振り返ると一本の線に見えるけれど、
実際は“選び直し”の積み重ねですよね。
私自身もそうなんですが、海老原さんはキャリアの中で「これは違うな」と感じた瞬間ってありましたか?

海老原:
あるよ。むしろ、それが分岐点だったりする。
人って、違和感が出たときに蓋をしてしまいがちなんだけど、
そこで足が止まったり、モヤモヤしたりする感覚が大事 なんだよ。

こういう“小さなズレ”って、じつはサインなんだよね。

  • なんとなくテンションが合わない
  • 朝起きたときに身体が前に進まない
  • 「このまま10年」がイメージできない

板谷越:
それ、すごく腑に落ちます。私も環境が変わる前って、必ず“どこかにズレがある時期”がありました。
その違和感を放置しなかったから、次に踏み出せた気がします。

海老原:
そうそう。
キャリアには“ジャンクションポイント”があって、
違和感を感じたときにそのレバーを切り替えられるかどうか で大きく変わる。

でね、ここが大人の難しいところなんだけど、年齢を重ねるほど、環境や責任が増えるほど、“レバーを切り替えること”が怖くなるんだよ。

でも本当は逆で、
違和感を無視して続けるほうが、長期的にはリスクが大きい。
筋力(スキル)をつけて風(時代の流れ)を読んでいれば、ちゃんと次に飛べるんだよ。

板谷越:
キャリアの分岐点って、派手な決断じゃなくて、
“小さな違和感を拾えるかどうか”なんですね。

海老原:
そう。
ジャンクションは“劇的な瞬間”より、
じわっと訪れる違和感 のほうに宿ってる。

だからこそ、そこで立ち止まれるか、
レバーを切り替えられるか。
それがキャリアを大きく変えるんだよ。

AIとバーチャル空間が変える「出会いの構造」――足し算から掛け算へ

板谷越:
ここまでキャリアの話をしてきましたが、最近すごく感じるのが、
“出会いそのものの構造”も変わってきているということなんです。
AIが当たり前に使われるようになって、人とのつながり方も違ってきましたよね。

海老原:
ほんとそうだよ。
僕らの若い頃は、出会いは完全に“足し算”だった。
会社、地域、コミュニティ。
会える人数に物理的な限界があったし、関係性も一対一の延長だった。

でも今は、バーチャル空間とAIで一気に変わった。
オンラインだけで完結するプロジェクトもあるし、
興味・関心でつながるコミュニティも山ほどある。

海老原:
つまりね、
アナログの出会いが「1+1+1…」だとすると、
デジタルとAIがかかると「1×1×1…」の掛け算になる。

組み合わせの可能性が、一気に広がるんだよ。

板谷越:
その感覚、すごくよくわかります。AIって、気づかないところで誰かの知恵と自分をつないでくれるんですよね。
例えば、AIが誰かのつくった設計やコードを引っ張ってきて、
自分の思考と“勝手に掛け算”してくれるようになってきました。

直接会ったこともない人の知恵が、AIを介して自然と混ざり合う。
それって、これまでの働き方ではあり得なかったつながり方ですよね。

海老原:
そう。
僕はね、「We are alone, not lonely」という言葉がすごく好きなんだよ。
一人で生きているように見えて、実はデジタルでめちゃくちゃつながっている。

距離や肩書きじゃなくて、
“思考の相性” でつながれる時代に入ってるんだよね。

板谷越:
「会いに行く」だけじゃなく、
“見つけてもらう”側になれる世界 に変わりつつある気がしています。

SNS、オンライン、検索、AI…。
興味の方向性が合っていれば、物理的には遠くても、
“出会い”が向こうからやってくる。

そういう状況って、キャリアの選択にもすごく影響しますよね。

海老原:
影響するよ。
だからこそ、さっきの“ベクトル”が必要になるわけ。
自分がどこに向かっているかが少しでも見えていれば、
AIがその道を広げてくれる。

逆に、ベクトルがないと——
AIはただの“ノイズ増幅マシン”になっちゃうんだよ。便利どころか、情報の洪水をかき混ぜるだけの存在になってしまう。

■自分のベクトルを持つ人は、AI時代にこそ磨かれていく

板谷越:
さっきのお話にあった“ベクトル”って、AI時代を生きるうえで、ますます大事になってきている気がします。
AIがあらゆる情報をつないでくれる今、向きが定まっている人ほど、どんどん加速するというか…。

海老原:
まさにそう。
AI時代に必要なのは「AIに負けない人」になることじゃないんだよ。
“自分の方向性を持っている人”が、AIによってどんどん磨かれていく。

だって、AIって向きがないでしょ?
こっちにも行けるし、あっちにも行ける。
だからこそ、使う側のベクトルが必要になる。

  • 何に好奇心が向くのか
  • どんな違和感を大事にしたいのか
  • どこへ向かいたいのか

これが少しでも見えているだけで、AIは“加速装置”になるんだよ。

板谷越:
逆に、ベクトルがないと振り回されてしまいますよね。
「AIを使うこと」自体が目的になってしまったり…。

海老原:
そうそう。
“目的がないAI活用”ほど不毛なものはないよ。

AIは、意志のない人にとっては、
大量の選択肢をばらまくだけの存在になってしまう。
でも、意志のある人にとっては、
その意志を何倍にも拡張する存在 になる。

板谷越:
DATALEとしてAIに向き合うときも、
「何を自動化するか」ではなく、
“人のどの思考を拡張したいのか” を起点にしています。

仮説をもっと速く立てられるようにとか、
チーム全員が同時に多様な視点で考えられるようにとか、
データから意味を見つけるプロセスをひらくとか。

AIは、そうした“人の思考プロセス”の共創者なんですよね。

海老原:
いいね、その考え方。
“AIと争う”んじゃなくて、
“AIと一緒に未来をつくる側に立つ”というスタンス。
いま必要なのは、そういう健全な焦りだと思うよ。

■ エピローグ――「選ぶ力」を手放さない

板谷越:
今日お話ししていて改めて思ったのは、
時代がどれだけ変わっても、
AIがどれだけ進化しても、
結局、一番大事なのは “自分で考えて、選ぶ力” なんですよね。

そしてその力って、誰かに与えられるものじゃなくて、
変化の中で自分がどう立つかを問い続けている人にだけ育っていく。
そんな気がします。

海老原:
ほんと、その通りだと思うよ。
キャリアだって、出会いだって、AIとの付き合い方だって——
レバーをどっちに倒すかは、最後は自分の意志なんだよね。

違和感を覚えたとき、
変化の波が押し寄せたとき、
AIという新しい選択肢が現れたとき。

その瞬間にどういう姿勢で向き合えるか。
そこで差がつく。

板谷越:
DATALEとしても、AIやデータ技術そのもの以上に、
「選ぶ力を取り戻すプロセス」に伴走したい と思っています。

  • 何が本当に課題なのか
  • どこに向かいたいのか
  • どんな未来をつくりたいのか

その“ベクトル”が見えると、
AIはその人や組織にとって、とても頼もしい存在になる。
そんな事例を、この3年でたくさん見てきました。

海老原:
ジャンクションポイントは、人生にも仕事にも必ず来る。
その瞬間に、
“変化を面白がる”ほうへレバーを倒せるかどうか。
そこが勝負だよ。

板谷越:
本当にそうですね。
変化のスピードが上がるほど、
“考えて選ぶ力”の価値はむしろ上がっていく。

もし迷ったり、次の道を探したくなったりしたときは、
一人で抱え込まずに、ぜひ一緒に未来の地図を描けたらうれしいです。

変化を、恐れるか。面白がるか。
そのレバーをどちらに倒すかは、いつだって自分の手の中にあります。


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人生にも、ビジネスにも、ジャンクションポイント――重要な分岐点が必ず訪れます。
その選択次第で、これからの景色は大きく変わっていきます。

DATALEは創業当初より、
「データとAIの力で、思考と意思決定に再現性をつくり、
ビジネスの成長を確実に前へ進める」

ことを使命にしてきました。

今回、海老原さんと対話をする中で、
変化の激しい今だからこそ、
“考えて、選ぶ力を持つ人”がより強く、柔らかく、前に進めるのだと実感しました。

もしデータ活用やAI活用の一歩を踏み出すかどうか迷っている方がいたら、
その瞬間こそがジャンクションポイントです。
DATALEは、そのレバーを“面白がるほう”へ倒すお手伝いをしたい。

データやAIは、未来の選択肢を狭めるのではなく、
むしろ広げ、確度を高め、スピードを加えるための力です。

これからも私たちは、
新しい可能性を早く、確実に見つけ、実現する支援
に全力で取り組んでいきます。

変化を、恐れるか。面白がるか。
その選択権は、今日もちゃんと、あなたの手の中にあります。